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薬学生の実務実習

病院における長期実務実習に対する基本的な考え方

1.基本的考え方

医療、保健、福祉等における社会的ニーズに貢献できる薬剤師育成等の観点から、「薬剤師として求められる基本的な資質」を策定し、学生が卒業時までにその資質を身に付けるため(学習成果基盤型教育, outcome-based education)に薬学教育モデル・コアカリキュラムが平成25年度に改訂された。改訂モデル・コアカリキュラムでは事前・病院・薬局実習が「薬学臨床」に一本化され、「安全で有効な薬物療法の提案とそれを実施・評価できる能力の修得」、および「チーム医療・地域医療への参画能力の修得」に新たな力点が置かれた。これに従って、「薬学実務実習に関するガイドライン」が作成され、大学が主導的な役割を果たし、実習を行う実習施設(病院及び薬局)と円滑に連携して、実習の水準の確保・向上を図ることを求めている。

実務実習は医療現場における薬剤師の役割を体得するとともに、臨床に係る実践的能力を培うために必須なものである。そのため、実習内容の均質化と参加型の質の高い実習を行うことが基本となる。また改訂モデル・コアカリキュラムにおいては、実習生が実習期間中に継続的に関わる必要がある「代表的な疾患(がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)」が規定されている。従って、実習施設は大学と緊密な連携のもとに、全実習生に全てのSBOsを実行し、「代表的な疾患」に継続的に関われるような実習を提供しなければならない。一施設内でSBOsあるいは「代表的な疾患」を網羅できない場合は、地域内でグループを作る必要が生じる。実習生が様々な機能を有する病院での実習を経験できることからも、日本病院薬剤師会は「グループ実習」を推奨する。さらに、実習生が自分の故郷に帰郷して実習を行う「ふるさと実習」も強く推進する。

2.受入施設について

実習生に不利益が生じないように、実習施設間の実習内容格差を無くすように努める。従って、全てのSBOsが実施できることが受入施設の基本的条件となる。また改訂モデル・コアカリキュラムおよびガイドラインでは、集合研修(複数実習施設から実習生を集めて教室、研修室等において行う座学等による研修)や課題演習による座学は極力避けるよう求めている。単独の施設で全ての実習を網羅することは困難であることが想定できるので、各地区および都道府県病院薬剤師会は大学と協力して、積極的にグループ施設を設定する。なお、実務実習は教育の一環であることから、実習施設および指導薬剤師についても評価されることになり、必要に応じて改善を図ることが求められる。

以下に、受入施設の基本的考え方に基づく要件を示す。

【受入施設の要件】
(A) 一施設のみで行う場合
a)病床数は問わないが、実習生が代表的な疾患(がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)患者に継続的に関われる病棟を有すること。
b)病棟における実習の重要性に鑑み、薬剤管理指導業務を実施し、院外処方せんの発行を推進していること。病棟薬剤業務実施加算を届けていることが望ましい。
c)認定実務実習指導薬剤師が1名以上配置されていること。
d)原則として、認定実務実習指導薬剤師の指導を補完するに相応しい指導薬剤師(日本病院薬剤師会認定指導薬剤師など)が複数配置されていること。
e)日本病院薬剤師会賠償責任保険(施設契約)又はこれと同等の賠償責任保険に加入していること。

(B) グループ施設で行う場合
a)責任施設(基幹となる病院)を中心に地域でグループを組み、グループ全体で、実習生が代表的な疾患(がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)患者に継続的に関われる病棟を有すること。
b)責任施設は、薬剤管理指導業務を実施し、院外処方せんの発行を推進していること。責任施設は、病棟薬剤業務実施加算を届けていることが望ましい。
c)認定実務実習指導薬剤師が、責任施設に1名以上配置されていること。
d)認定実務実習指導薬剤師の指導を補完するに相応しい指導薬剤師(日本病院薬剤師会認定指導薬剤師など)が、各グループ施設に配置されていること。
e)各施設において、日本病院薬剤師会賠償責任保険(施設契約)又はこれと同等の賠償責任保険に加入していること。

3.一クール毎の受入学生数について

受入学生数は、受入施設の病棟数を目標とすること(グループ実習にあっては、責任施設の病棟数)。

但し、受入学生数は、改訂モデル・コアカリキュラムに対応した実習が適正に行われることが保証される数とし、受入施設における構造設備の状況や実習指導体制などを考慮し適切に設定すること。

4.実習期間について(ガイドライン記載事項)

病院、薬局の実習期間は連続性のある 22 週間とし、各施設 11 週間を原則とするが、大学が主導し病院-薬局が連携して更に学習効果の高い方略や期間等を検討し実習を進めることも可能である(ただし、22 週間を下回らない)。この場合、大学が具体的な実習期間を設定し、 実習施設、関係団体との十分な協議の上で決定する。

5.受入学生について

受入学生については、下記事項が事前に確認されていること。
a)実習を行うにあたって必要な知識・技能・態度が修得されていること。
b)健康診断を受診し、実習に際し健康上問題がないこと。
c)必要な疫学的検査を実施していること。
d)必要な予防接種を受けていること。
e)傷害保険と損害賠償保険に加入していること。

6.学生の評価について

学生の評価については、 薬学実務実習に関するガイドラインに従うこと。

平成27年2月14日
一般社団法人 日本病院薬剤師会

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