English Page
国際交流

AASP第3回薬学部長フォーラム2014報告

シンポジウムの風景

シンポジウムの風景


大学ポスター展示の風景

大学ポスター展示の風景

 アジア薬科大学協会Asian Association of Schools of Pharmacy(以下AASP)は、1)アジアの医療の改善のため薬学教育および研究の質の向上に積極的にリーダーシップを発揮することと、2)AASP 会員大学のコアカリキュラムと教育内容を調和させることを目的として、2001年4月に設立されました。AASPはアジアの会員校同士の相互交流を通し、薬学教育における意見や企画の交換、および研究の相互協力を促進するための場を提供しており、主な活動は2004年以来、隔年に開催される教育・実務実習・科学分野のAASPカンファレンスであり、もう一つは薬学部長フォーラム(Deans Forum)であります。後者は、薬学部長、教員、教育機関が直面している薬学教育の問題に的を絞って討論を行う会議であり、第3回AASP薬学部長フォーラムは、「アジアの地域ごとに見た薬学教育の調和」をテーマとして、2014年6月28日-29日に東京(慶應義塾大学薬学部芝共立キャンパス)で開催されました。

 まず6月28日には「シンポジウム1.ASEAN10か国の調和と薬学教育」において、ASEAN10ヵ国の薬学教育の調和に向けた取り組みに関する基調講演の後、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの各国における薬学教育の現状について紹介がありました。次に「シンポジウム2.東アジア地域、オーストラレーシア、南アジア地域における薬学カリキュラムの現状」において、中国、韓国、台湾、インド、オーストラリア(ニュージーランドを含む)から、各国の薬学教育の現状について紹介がありました。日本人参加者にとって、アジア各国の薬学教育の現状を知るための非常に良い機会となりました。夜にはGala Nightと称して懇親会を開催し、参加者による歌や踊りの披露もあって、参加者間で大いに親睦を深めました。

 6月29日の午前は「シンポジウム3.日本の薬学教育の現状:その評価と改訂」において、日本の薬学教育の現状をアジア各国の参加者に紹介することを目的として、薬学教育協議会、薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会、薬学共用試験センター、薬学教育評価機構、日本薬学会から発表がありました。日本における6年制教育の現状と課題、モデル・コアカリキュラムの改訂、薬学共用試験の内容と意義、薬学教育評価の内容、創薬研究者養成のための4年制教育について紹介があり、日本の薬学教育の現状をアジアからの参加者に理解して戴いたものと思います。
 6月29日の午後は「Small Group Q&A and Discussion」と称して、シンポジウム1~3の発表者が一人ずつテーブルに座り、参加者が自由に各テーブルに着いて個別に質問し、理解を深める企画を設けました。この企画は非常に好評で、各テーブルで活発な討論が行われ、日本とアジア各国、さらにアジア諸国間で、正確な情報交換が行われ、相互理解が深まりました。AASP幹部によれば、今後のカンファレンスやDeans Forumにおいて同様の企画を設けたいとのことでした。

 フォーラム自体は、6月28日と29日の2日間でしたが、6月27日には学部長名刺交換会(Deans Social Gathering)の時間とオプショナルツアーとして第一三共くすりミュージム(東京都中央区)の見学を、6月30日にはオプショナルのバスツアーとしてツムラ漢方記念博物館(茨城県稲敷郡阿見町)訪問の機会を設けました。また、また、2日間ともに昼食の時間を2時間程度確保し、「大学ポスター展示とディスカッション」と称して、アジア各国と日本の薬学部の間で国際交流を深める機会を設けました。

 今回のフォーラムには、国内から147名、海外からは13ヵ国・48名の参加がありました。上記の大学ポスター展示では国内から56大学、海外から12大学が発表を行いました。約200名の参加者が、2日間にわたって非常に熱心な討論を行いました。アジア各国の薬学教育は急速に発展しており、各国ともその特徴を活かした薬学教育の整備に真摯に取り組んでいることを実感しました。特に、タイ、台湾、韓国、シンガポールの充実ぶりが目立ちました。また、企業における研究者養成を、薬学教育の中に取り入れていることに驚きを感じました。一方、ASEAN10か国の薬学教育の調和については、薬学教育年限が未だ統一されていないなど、道のりが遠いという印象を受けました。今後の予定としては、2015年にAASPカンファレンスが台湾で、2016年に第4回AASP薬学部長フォーラムがベトナムで、2017年にAASPカンファレンスがインドで開催されることが決まっております。

 今回の第3回AASP薬学部長フォーラム2014では、AASP、薬学教育協議会、北里大学、慶應義塾大学、京都薬科大学の5団体が主催者となり、文部科学省と厚生労働省の後援を戴き、全国薬科大学長・薬学部長会議、日本私立薬科大学協会、国公立大学薬学部長(科長、学長)会議、日本薬学会、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、薬学共用試験センター、薬学教育評価機構に共催団体となって戴きました。また、内藤記念講演助成金および永井記念薬学国際交流財団助成金を戴き、さらに企業12社から広告・協賛金を戴くことで、非常に有意義な集会を開催することができましたことを、この場を借りてお礼申し上げます。

AASP第3回薬学部長フォーラム2014組織委員会 委員長 伊藤 智夫

関連ページ

▲ ページ上部に戻る